
Times square,109 power saving, (2011/3)
— デジタル始めて何年くらいですか?
「最初に写真が雑誌に掲載されたのが1996年。美大の学生だった1980年代に『アメリカではどうやらコンピュータを使ってるらしいよ』というのが風の噂で伝わってきて、漠然と憧れがあったんですよ。日本では多分1980年代半ばくらいにやっと皆が使えるMacが出てきて、当時からイラストレーターとかフォトショップもあったんですけど、まだレイヤーにもなってなかった。しかも高い! だからフォトショップ教室に通ってようやく触る、みたいな(笑)。でも手応えはあって『これは使えるな』って思ってたんです。で、少し安くなった時になんとか本体だけ手に入れたんだけど、モニターを買えなかったから3ヶ月くらいは使えなかった」
— それから仕事にも取り入れていって?
「そうですね。その頃はまだ逆にフィルム入稿が当たり前で『なんでまどろっこしいパソコン使うの?』みたいな言われ方をしてた時代だったんですね。だからパソコンでやるメリットみたいなものが必要で。それでアナログで撮る絵と特別な違いをアピールするために合成写真をやったんです。そしたら面白い写真を撮る人がいるというのが口コミで広まっていった感じです。1990年代はストリートカルチャー全般で垣根が崩れて何でもいいじゃんって時代だったのに写真はまだ独自の壁があったんですよ。グラフィックとの垣根が崩れたのは全部パソコン時代に突入してからなんだけど、僕は当時からやっちゃっていいんじゃないかと思って。そこから皆デジタルに移行するだろうというのも予想がついたことなんですけど、案外合成までやる人は未だに少ないんですよね。合成写真って平たく言うと写真を切り貼りする世界なんですけど、自分の写真に鋏を入れるのはやっぱり抵抗はありますよ。ロケ行ってまで撮ったのに結局背景使わないのかい、みたいな複雑な思いもあるし。抵抗ある人はいっぱいいると思う。だから1人だけガラパゴス的な進化をしたような感覚があります」
— そこから「crosspoint」シリーズを始めたきっかけは?
「海外に行ったときとかに素材集的に撮ってた写真が元々たくさんあって、アーカイブを作ってたんです。そのときに『シャツを作るからグラフィックを提供してほしい』って岡田晋(プロスケートボーダー)くんに頼まれて。晋くんはアメリカと日本を行き来してスケートしてたから、『アメリカと日本のストリートがクロスした景色って面白くない?』って話をして。それでできたのが『Times Square, 109(2010)』なんです。それが思いのほか上手くできて、続編をいくらでも作れるんじゃないかって。2010年の段階では20枚くらいが全てだったんですけど、東京で展覧会を開くことができて。それが話題になって、2010年の9月には京都でもやったんです。そのときに、地元で自分の知っている景色があった方が嬉しいだろうなと思って、大文字焼きとハリウッドをくっ付けたりして京都シリーズを作ったんです。鴨川とセーヌ川の写真も作ったんですけど、京都とパリって姉妹都市らしくて、実は10年くらい前に『セーヌ川に架かってる橋のレプリカをプレゼントするから鴨川に架けたらどう?』という話があったらしいんですね。その橋が実際に架かることになっていたらこの写真の景色になっていたらしい。知らずに作ったんですけど、偶然が偶然を呼んですごい盛り上がりましたよ」
— 「crosspoint」の場所を選ぶ視点は何が基準になるんですか?
「基本は僕が行った場所なんですけど、海外に行ってそこの地に降り立った時に『ここ、青山っぽいな』とか自分が知ってる場所と比較して捉えるじゃないですか。そこから渋谷っぽい場所を見つけては撮ってみたりっていう遊びが事の発端なので、基本は自分の知ってる街と初めて行った街の組み合わせなんです。言ってみれば、文化の対比ですよね。制作の際には1個だけルールがあって、鋏の入れ方として境界線は基本1カ所なんです。このゴミ箱が邪魔だから、人がうるさいからといってどかすことはしない。2枚の写真があって、それをくっ付ける以外のことは一切やってないです。合成写真が嘘をつく手段になってしまうと、ヒエラルキーが低くなるし、合成が後ろめたい行為だという写真原理主義みたいな世界になってくる。だからこそその価値観を逆手にとりたいというか、合成であることが価値を下げるわけではないんだよという想いでやっているので。あとこれって、海外の人も逆の立場から同じ風に見えるというのが面白いなって。グローバリズム的なところで垣根がないですよね」
【P.M. Ken 「crosspoint」】
2月10日〜21日@LOGOS GALLERY 渋谷パルコ パート1/ B1
写真集『crosspoint』も2月10日に同時発売。2,800 円(PARCO 出版)
www.pmken.com
※『EYESCREAM 2012年3月号』より
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