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こちらのページは2014年12月15日以前に作成された記事の為、旧デザインで表示しています。EYESCREAM.JPの最新記事はこちらからチェックを

INTERVIEW

人気DJのエクスクルーシヴMIXを毎月配信! 『EYESCREAM.JP Mix Archives』#19 COMPUMA

EYESCREAM.JPレコメンドDJへのインタビューとエクスクルーシヴ・ミックスを紹介する『EYESCREAM.JP Mix Archives』。今回登場するのはCOMPUMAです。

伝説の音響系エレクトロ・グループ、ADS。そして、2007年に10年越しのファースト・アルバムを発表したエレクトロ・ファンク、グループ、スマーフ男組の一員としての活動に加え、DJとしてもエレクトロや電子音楽を軸に、その時々で音楽性を変化させながら独自の音楽観を提示。また、WAVE渋谷ロフト店、TOWER RECORDS渋谷店、そして、ワールド・ミュージックの専門店であるEL SUR RECORDS、大阪のNEWTONE RECORDSと、長年に渡ってレコード・ショップに勤務し、名物バイヤーとして、耳の肥えた音楽好きに未知なる刺激的な音楽を紹介し続けてきました。

さらに2012年には2枚のミックスCD『Something In The Air』と『MAGNETIC -exploring the future of funk in the universe』をリリースし、それ以前にDJで展開してきた音楽世界を更新。耳にも目にもフレッシュな未踏のサウンドスケープを描き出したことで、大きな話題となりました。そんな彼の音楽遍歴を紐解きながら、ここ最近のDJプレイに通ずるという耳当たり柔らかな、そして深呼吸出来そうなリラクゼーション感覚を内包した新感覚ディープハウスをお楽しみください。

※ミックス音源はこちら!(ストリーミングのみ)

EYESCREAM.JP Mix Archives #19 2013.1 by COMPUMA by Eyescream.Jp on Mixcloud

Interview & Text : Yu Onoda
Editor : Yugo Shiokawa
DJ Mix recorded at Forestlimit
Special Thanks:DCK

自分にとっての当たり・はずれを経ながら、そしてその基準も日々更新しながら、音や音楽の好みの精度をより上げていくというか、常に自分好みの音楽を探求していくというか。そんな事が楽しくて、日々音楽と向かい合っているという感じです。

— COMPUMAさんというと、ADSやスマーフ男組、あるいはDJ活動を通じて、その音楽性の軸にエレクトロがあることはよく知られていると思うんですけど、エレクトロとの出会いはやはりニューウェイヴの流れということになるんですか?

Afrika Bambaata & Soulsonic Force『Renegades Of Funk』
ヒップホップの父、アフリカ・バンバータが83年にリリースした大クラシック。プロデュースはアーサー・ベイカー。2000年にはレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンも「Renegades」の中でカバーした。

COMPUMA:そうですね。地元、熊本で高校生の時にニューウェイヴなんかを聴いていた時代に、ジョン・ライドンと一緒にやってるってのでアフリカ・バンバータの存在を知って、それで、気になって地元のいつも行ってたレコード屋に行ったら、ロックのAのコーナーに12インチ45回転ジャンボ・シングルとして置かれていたんですね。「Planet Rock」とものすごく迷って、その時に「Renegades Of Funk」のジャケットがなぜだか強烈にガツン!と来て。今思えば、あの時にFUNKを注入されたのかもしれませんね(笑)。
そこで買って聴いてみたら、当時、ヒップホップやエレクトロがどんな音楽か分かっていなかったので、クラフトワークと同じようなものなのかな?とか適当に思ってたんですが、Aメロ、Bメロ、サビっていうような構成もなく、メリハリがないし(笑)、ずっと喋ってるから聴き所がよく分からなくて。でも、グルーヴ……というより、ノリがいいところが気に入って、そこからアーサー・ベイカーの名前を知ったりして、リミックスやダブ・ヴァージョンという概念も新鮮でしたし、よりいろんな音楽をちょっとずつ聴くようになっていったんです。

— ただ、COMPUMAさんはB-BOYど真ん中な方ではないですよね。

COMPUMA:最初に「エレクトロが軸」と言っていただきましたけど、エレクトロはもちろんなんですが、ホントある種、節操なく色んな音楽を好きで聴いてきて。こうして、いい歳になりましたけど、自分は特定のジャンルについて、何か「これ!」というものがあるわけではなく、基本的に圧倒的な雑食なんですよ。ただ、雑食ではあるんですが、自分にとっての当たり・はずれを経ながら、そしてその基準も日々更新しながら、音や音楽の好みの精度をより上げていくというか、常に自分好みの音楽を探求していくというか。そんな事が楽しくて、日々音楽と向かい合っているという感じです。ある種、自分にとっての雑食を極めようと(笑)。

— それが音楽を追求する原動力だと。

COMPUMA:あと、自分のなかで大きいのは、オタクDJ的な事を始めた80年代後半から90年代初頭の時期に、例えば、デ・ラ・ソウルだったら、ファースト『3 Feet High & Rising』やセカンド『De La Soul Is Dead』、ジャングルブラザーズのファースト『Straight Out the Jungle』セカンド『Done By the Forces of Nature』、KLFの『Chill Out』や『Space』、あるいはオーブの初期、ヤン富田さんといとうせいこうさんの『MESS/AGE』、クリスチャン・マークレーの『More Encores』と出会ったことが大きいです。当時のメインストリーム、アンダーグラウンドを超えて、テーマを設けて、編集やコラージュ、非音楽を音楽に、あるいは音楽を非音楽に再構築することのかっこよさに出会えた事がホントに大きいです。実際、今挙げた作品は時代を超えて、輝きを放っていると思うんですね。これらの作品を体験以降、こんなような感覚を、音や音楽に見出して楽しんでいるところがあると思います。

— レンタル・レコード店でアルバイトしていた大学時代を経て、卒業後はセゾン傘下の今はなきレコード・ショップ・グループ、WAVEに入社されるんですよね。

COMPUMA:はい。今ではちょっと考えられないですけど、大学を卒業する時に、当時ミュージック・マガジンに載っていたWAVEの正社員募集の広告を見て応募して、入社しました。…なんですが、最初は六本木や渋谷のWAVEの店舗ではなく、光が丘の団地の横にある西友の中のレコードCDショップ、ディスクポートに配属されて…。今思えばそこも楽しかったんですが、当時は憧れのWAVEへの配属でなかったので、がっかりして。なので、その翌年、渋谷WAVEロフト店へ異動になった時は、すごくうれしかったのをよく覚えています。

— WAVE、特に80年代末の六本木店は、品揃えが突出して洗練、先鋭化していて、個人的には音楽が詳しい大人が行く店として、ドキドキしながら足を運んでいたんですけど、渋谷WAVE渋谷ロフト店は、六本木に比べると入りやすいお店でしたよね。COMPUMAさんは、当時、橋本徹さん(現カフェ・アプレミディ・オーナー)がイージーリスニング音楽や昔のサウンドトラックの新しい楽しみ方を提唱していたサバービアのコーナーを担当されていたんですよね。

COMPUMA:いや、あれなんですよ。90年代はじめ頃当時、サバービア的な音楽の楽しみ方の流れも誕生してて、モンド・ミュージック前夜、宇川さんのコンピレーション『The Exotic Moog Of Space Age Bachelor Pad Music』が出るちょっと前だったと思うんですけど、自分でもそういった音楽に興味があって、ちょっとずつ、サン・ラを買い始めたり、電子音楽とかムーグ物を買い漁っていて、そういうCDを自分でも販売したい!って気持ちが強かったので、上司に無理矢理お願いして、サバービアのコーナーを特設で作ってもらって、そこに自分が考えるサバービアなCDも勝手にセレクトして置いたりしてたんですよ。そういう流れでバッファロー・ドーターのムーグ山本さんと知り合ったり、橋本さんにもご挨拶をしたんですけど、その時、僕の色が出すぎた売り場を見て、「これはサバービアじゃない」って言われたり(笑)。

— はははは。

COMPUMA:その後、アシッド・ジャズとかテクノ・コーナーのアシスタント・バイヤーを担当して、そこから今度はワールド・ミュージック・コーナーへ異動になるんです。ただ、どこへいっても自分は生意気で、ガツガツしてて。今思えば、若かったとはいえ、ホント諸先輩方にご迷惑をかけていたのだな、と反省しつつ…バングラとかサンズ・オブ・アルカ、ムスリムガーゼみたいなクラブ寄りだったり、インダストリアル寄りのワールド・ミュージックやレゲエ、ダブみたいなものをどさくさ紛れに売ったり、サン・ラのVHSや、クリスチャン・マークレーや、自然音とか効果音のレコードとかエレクトロ、韓国のポンチャックなんかを仕入れたりしてました(笑)。

— ははは。ポンチャックというのは、韓国の中高年が聴くチープなダンス音楽ですね。湯浅学さんと根本敬さんの幻の名盤解放同盟、電気グルーヴが当時押してましたもんね。かたや、当時のWAVEというと、六本木WAVEのバイヤーには、現LOS APSON?オーナーの山辺(圭司)さんほか、現EL SUR RECORDSオーナーの原田尊志さんや井上薫さん、三宿のバーkongtongオーナーの福田達朗さんなど、錚々たる面々が勤務されていたそうですが、そういう方々との交流もあったんですよね?

COMPUMA:原田さんは憧れの大大先輩でしたよ。今でこそ、EL SURでお手伝いをさせてもらってますけど、当時はなかなか話しかけられなかったですね。それから山辺さんはインディー特殊コーナーを担当していて、一緒にDJをやるようになったり、その後仲良くさせていただくんですけど、その後、WAVEを辞めて、自分のお店、LOS APSON?をパリ・ペキンの軍馬くんとオープンするんですよね。井上薫くんは秘かに同期入社なんですけど(笑)、彼と福田さんが西麻布のMマチステっていう小さなクラブでDJをやってて、そこに誘ってもらいました。それが自分のDJのはじまりです。92〜3年くらいだったと思います。当時、お店に貼ってあった別の曜日のチラシには、MOODMAN川辺(ヒロシ)さんの名前もあったように思います。そこでは自由にかけたい音楽をかけてました。うまくはなかったですが、それこそ、好きなヒップホップかけたり、ワールド・ミュージックをかけたり、ニューウェイヴをかけたり、レジデンツかけたり、マーティン・デニーかけたり。電子音とまぜたり、その後、そこでADSを始めるんですね。それ以降、宇川(直宏)さんや、中原(昌也)くん、MOODMANと知り合ったりしながら…ADSのはじまりはイベントだったんです。

— はい、そう聞いています。

ADS (Asteroid Desert Songs)『'Til Your Dog Come To Be Feed』
のちにAhh! Folly Jetほかの活動を行う高井康生、そして、スマーフ男組を結成する松永耕一(Compuma)、村松誉啓(マジアレ太カヒRAW)、高橋啓(アキラ・ザマインド)からなる4人組が佐々木敦主宰のレーベル、UNKNOWNMIXより発表した96年のファースト作。音響的に側面から電子音楽とエレクトロのクロスオーバーを実践した先鋭的な一枚。 

COMPUMA:その頃、DJやクラブで、クラブミュージックのいろんな可能性も含めて、もっと色んな音楽をかけてみたいっていう欲求があって。そういう音楽をかけたり、プレイを聴きたい、そして演奏を見たい人たちを呼んで、というのが自分達のイベントの始まりだったんです。もともとは「Astro Ape」っていうイベント名で(笑)、ゲストに山辺さんを呼んだりしながら、エキゾばっかりかけたりとか、それが、ADSのメンバー達と知り合ってから、何かやろう!って発展して、イベント名もあらためて考えようって事で、ADS「Asteroid Desert Songs」っていうイベントになったんです。

— つまり、音楽的な部分で自分にとって居心地のいい場所を作るべく、イベントを始めたわけですね。

COMPUMA:そう。まさにそうだったんです。当時、20代後半だったとはいえ、人前で音楽を表現するという意味での青春期、初期衝動だけでやってましたからね。ADSでは、高井(康生:Ahh! Folly Jet)くんはギターを中心に、村松さん(マジック・アレックス a.k.a.マジアレ)はドラマーだったから、機材のことに詳しかったり、演奏するという事に長けていて、「楽器を持ち込んでやろうよ」ってことで、自分のバイト時代の音楽仲間も呼んでシンセやら機材あれこれ持ち込んで、マチステの狭いDJブースに機材をぎっちり並べて演奏をしたんですけど、DJしか頭になかった自分にとってはそうやって音を出すことが初体験で、ものすごく新鮮だったことを覚えています。
あと、宇川さんを紹介してもらって、VJをやってもらったんですけど、今でこそイベントでVJというのは当たり前ですが、当時はあまりなかったように思います。イベントに映像、しかもVJが入ることで、耳だけの楽しみだけじゃなく、視覚的な楽しみが加わること、しかも、宇川さんが流す映像も圧倒的に衝撃的だったし、音にあわせて、VJミキサーのフェーダーを切り替えるカットアップ・コラージュ感覚とか、宇川さんが音に合わせてフェーダーを動かす手首から首や背中のシルエットを含め、とにかく衝撃的なかっこよさで。新たな楽しみ方を知ったという意味で、あの頃の体験は自分にとってデカかったと思います。

— それがZOOやSLITSを含め、94年から96、7年くらいのオルタナティヴな現場の空気感でしたよね。

スマーフ男組『スマーフ男組の個性と発展』
コンピューマ、マジアレ太カヒRAW、アキラ・ザ・マインドからなる3人組がグループ結成から10年越しで発表した2007年のファースト・アルバム。虫声MCとエディットの嵐が吹き荒れるエレクトロ・ファンクが織りなす3フォートのハイでライジングなポップ・アート感覚がいつだってフレッシュな1枚。

COMPUMA(レーベル、HOT-CHAを主宰していた)小林(弘幸)くんがSLITSでやってたイベントに、スマーフ男組を始める前、僕とマジック・アレックスの2人でやってたM&Mプロダクションを呼んでくれて、確か、そこでのライヴを気に入ってくれた小林くんがスマーフ男組の作品を出そうと動いてくれたんですよ。その頃、恵比寿にみるくが出来て、ディレクターだった塩井るりさんと宇川さんのつながりから、僕らもちょこちょこ呼んでもらったりして、あそこが僕らにとってのオルタナティヴとDJカルチャー、それからライヴのクロスポイントの学び舎でした。
LOS APSON?に、パリ・ペキン・レコード、クララ・オーディオ・アーツ、それから渋谷CISCOラウド店に、マキシマム・ジョイといったレコード店、それからライターの佐々木敦さんと原雅明さんがやってたHEADZがあったり、デス渋谷系という言葉があったり、ビースティ・ボーイズもグランド・ロイヤルをやってたり、そういうオルタナティヴなもの、エクストリームなものが流行った時期だったんですね。

— それからCOMPUMAさんといえば、WAVE退社後に今度は渋谷のタワー・レコード5Fの通称「松永コーナー」と呼ばれる特殊音楽の名物コーナーで、バイヤーを担当されていたことが一部でよく知れています。

スマーフ男組とSPACE MCEE'Z『WUKOVAH Sessions Vol.1』
スマーフ男組、ロボ宙とZEN-LA-ROCKからなるSPACE MCEE'Zがサンプラーとシンセサイザー、ベース、ドラムという編成で行った全曲新曲のフリーフォームなファンク・ジャムが繰り広げられるライヴ・セッション盤。アートワークを石黒景太が担当した2007年作。

COMPUMA:すごくお世話になりました。WAVEで自分なりにがんばって仕入れていたレベルを超えた、もっとスケールのでかい壮大なレベルのいろんなものが1995年、現在の場所にオープンした当時の渋谷タワー・レコードの5F、6Fには置いてあったんです。現在は菊池成孔さんの作品などをリリースしているイースト・ワークスにいらっしゃる高見(一樹)さんが当時売り場を作られたんですけど、ジョン・ケージの様々な楽譜や、マース・カニングハム舞踏団のVHSに、シュトックハウゼン協会のCDやサイン付きポスター、そしてUSアンダーグラウンド・アバンギャルド・シーンの各種カセットテープなどなど、それまで見たこともなかったようなのも含めて、当時の自分にとっては最高の環境で、そういったものに囲まれる仕事が始まって。
クラシック寄りのアカデミックな流れでの現代音楽や電子音楽にミニマル音楽などのニューミュージックと呼ばれる音楽や、ニューエイジと呼ばれる音楽、ワールドミュージックの中での民族音楽と呼ばれるもの、様々なアヴァンギャルドな音楽が渾然一体となっている売り場だったんですが、その時、そういった音楽というのは、みんな興味があってもなかなか手を出しにくいジャンルに感じたのと、そのような音楽ももっとポピュラーに楽しんでみてもいいのではないかな?とか勝手に思ったりして。当時の音楽シーンでもそのような音楽を経て表現される音楽が続々と登場していた事もあったので、売り場に通ずる現在の音楽と、それに通じる過去の音楽を並列で紹介したいっていう思いがすごくあったんですね。しかも、かくいう自分も当時はそういう音楽を絶賛勉強中だったので、気持ち的に、2、3歩くらい前か後ろでお客さんと併走しながら、一緒に楽しむような感覚で精進してバイヤーをやらせていただいたんです。

— そういう意味で、今回お話を聞いてきて、エレクトロやヒップホップのコラージュ感覚、その後の雑食的なリスニング体験に加えて、長らく、レコード店のバイヤーを担当されていた経験が松永さんの音楽観に大きな影響を与えていますよね。

COMPUMA:そうですね。途中ブランクもあるんですけど、現在もありがたい事に、渋谷のEL SUR Recordsと大阪のNEWTONE RECORDSのお手伝いをさせていただいてますし、レンタル・レコード屋のバイト時代含めたらレコード屋現場仕事、いつの間にか25年ほど経ってますね。そういう意味でも自分にとって"売る側"として関わっているレコード屋さんの存在は大きいと思います。

— 色んな音楽を聴きながら、COMPUMAさんを魅了して止まないエレクトロの魅力とはどういうものなんでしょうね?

Various Artists『Soup Stock Tokyoの音楽』
Soup Stock Tokyoから生活や家庭での音楽を提案。ブラジルなどのワールド・ミュージックからソウル、R&B、USポストロック、日本語曲を含めた幅広いジャンルの全16曲からなる美味なる音楽のスープを味わえるコンピレーション。その選曲を店内BGMも手掛けるCOMPUMA氏が担当。

COMPUMA:大雑把にいうと、リズムマシンの音が好きで、特にローランドTR-808とプリセットされたリズム。そんで電子音と電子変調音が好きっていう(笑)。そう言ってしまうと元も子もないんですけど(笑)、TR-808の音色が本物であろうが、シュミレートした擬似的なものであろうが、もはやどうでもよくて。そういう音が鳴っていたり、カウベルやクラップが鳴ってるだけで、心が躍るんですよ。TR-909も最高にいい音なんですけど、外側含めてプラスチックっぽい鳴りなのに対して、TR-808って、圧倒的に鉄が鳴っているように聞こえるところが……そう、格好いいんです(笑)。

— ははは。でも、かつての松永さんは同じTR-808を使ったテクノやハウスは、そこまで積極的にプレイしていませんでしたよね。

COMPUMA:そうですね、自分の狭い範囲で偏見を含めた知るかぎりのかつてのテクノの印象は、自分にとってはとにかくBPMが速すぎたり、アーティストの個性というよりも、DJプレイでのパーツとしての機能性が強すぎる印象で、あんなに愛嬌たっぷりのエレクトロ・ファンクが、ダンスミュージックの機能として進化し研ぎすまされるとこんなにもクールになってしまうものか。と、それから大きいのはテクノ・カルチャーそれ自体に、当時の自分にはあまり馴染みがなかったのもデカイです。
ハウスも、例えば、ヒップホップ・エレクトロ経由で聴けたトッド・テリーやパル・ジョイ、ボビー・コンダースにマスターズ・アット・ワーク、シカゴハウスのジャックものやアシッド・ハウスは大好きで楽しんでいたんですけど、どっぷりとハマることはなかったんです。その後、MOODMANや宇川さん、「GODFATHER」の影響もあって、みんなが広義のハウス・ミュージックに染まっていった時期も、自分達の興味はもっかラテン・フリースタイルとか、エディットに向かっていましたし(笑)。

— では、ヒップホップに関してはいかがですか?

COMPUMA『Something In The Air』
ドローンやフィールドレコーディング、ジャズ、電子音、アンビエントが溶け合った音の海。その静かな満ち引きと潮流が架空の物語を浮かび上がらせるCOMPUMA氏のネクスト・ステップとなるミックスCD。アートワークはミックスにインスパイアされて書き下ろした五木田智央の絵とジェリー鵜飼のデザインによるプロダクト。Vincent Radioでオンエアされた「Something In The Air Part 2」も存在する。

COMPUMA:なんやかんやで、リスナーとしてマイペースで楽しんできてます。いろんな時代のメインストリームも、もちろんですが、エレクトロの流れでマイアミ・ベースやラテン・フリースタイルを聞いたり、Qバートやミックス・マスター・マイクにDJスワンプなんかのスクラッチDJには、HIPHOPのエクストリームで過剰なアヴァンギャルドを感じたり、レゲエでのダブ・ヴァージョンの流れでスクリューを楽しんだり、そこからUS南部の歌心のあるものに魅かれたり、チカーノ・ラップのローライダーなオールディーズ感覚にハマったり、デジタル・アンダーグラウンドやトゥーショート、E-40らのベイサイドがずっと好きだったり、でも、まぁ、それも専門的に聴いてる人に比べたら、雑食的な聴き方だと思いますが、自分なりのOGな距離感で楽しんでます。
そんな、いろんな音楽との出会いや付き合い方の中で、バイヤーとしての経験や、リスナーとしての色んなものを経て、ここ最近は今まで自分に馴染みがなかったテクノのなかにも自分が楽しめる音楽があることが分かってきたり、ダブステップをはじめとするいわゆるベース・ミュージックも、マイアミ・ベースを楽しんできたおじさんとしては、はじめ何がベースなのかよく分からなかったんですけど、そういう音楽のなかにも自分好みのアプローチの作品があることに気づいて、なるほどー!とか思ったり、そういうものをちょっとずつ集めたり、DJの時にもかけてみるようになったんですね。そんな流れをまとめてみたのが、去年の12月に出した『Magnetic』っていうミックスCDなんです。

— なるほど。

COMPUMA『MAGNETIC - exploring the future of funk in the universe -』
「Something In The Air」が静だとすれば、最新作となる本作は動にあたるミックスCD。電子音楽からエレクトロ、ベース・ミュージックまで、そして、過去と現在を接続しながら、エレクトロニクスでエクスペリメンタル、エレクトロでマグネティックなファンクの未来を描き出す、ネクスト“ネクスト・ステップ”な1枚。アートワークは「Something In The Air」と同じく、五木田智央の絵とジェリー鵜飼のデザインによるプロダクト。A2サイズのナンバリング入りポスター付きのスーパーリミテッド盤も存在する。

COMPUMA:『Magnetic』の前、去年の2月に『Something In The Air』っていうミックスCDを出したんですが、その経緯というのは、2011年の秋くらいになんかDJの調子が悪くなって、奮い立たなくなってしまった時期というのがあって。で、その頃に、「そういえば、いろんな音楽が好きだったよな。そういったものにもう一回立ち返ろう」ってことで、昔、自分が好きだったり、WAVEやタワーレコード時代に売ってたり好きだった、ビートのない環境音やドローン、電子音楽ものを聴き直したり、DJをやる時もあえて「ノンビートやアンビエントのようなことをやらせてもらっていいですか?」ってお願いして、早い時間や遅い時間にやらせてもらったり。
そんな中で印象深いのが、今回のものも含めて、最近の自分のミックスを録音させていただいている幡ヶ谷のForestlimitで「Sleeping Forest」っていう眠りのためのイベントに呼んでもらって。フロアにゴザを敷いて、みんながゴロゴロしている中、ちょっとマジで「ここにいる全員だんだん眠くなーる!眠くなーる!」みたいな感じでDJをやったら、スタッフ以外見事に全員が寝たんですね。しかも、静かなピアノの曲を普通にかけている時に、途中でCDJのピッチの振り幅を最大にしておいて、フェーダーを指でピーンと弾いて、ガクンとスクリューしてテンポを落としたら、その瞬間、目の前でオチる寸前だった男の子がガクンと床に伏せたんです(笑)。うそー!という感じで、もう、催眠術かけたみたいで恐ろしいなと思いつつ、内心ニヤニヤしてました。その時のDJがあまりに印象深くて、その記憶をどこか残しながら、『Something In The Air』を録音しました(笑)。

— COMPUMAさんの新境地を切り開く、アンビエントや電子音楽、ドローンなどを交えたメディテーショナルなミックスですよね。

COMPUMA:『Something In The Air』を出したら、どこか心の整理が出来て、またふたたび、気持ち良くパーティDJを出来るようになったんですけど、そういう意味でも自分にとってはターニング・ポイントになったミックスです。そして、その次の構想として頭の中にあったもの、『Something In The Air』のサウンドスケープを経た上での、電子音楽、基盤が鳴っている音というか、電子音楽としてのダンス・ミュージックをサウンドスケープにひとつの世界にまとめてみたく『Magnetic』を作ってみたんです。

— これまた新境地を切り開くミックスCDでしたよね。個人的に『Something In The Air』と『Magnetic』の2枚を聴きながら思ったのは、ここ最近、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーのような電子音楽やドローン、アンビエントの新しい世代が出てきているじゃないですか?

COMPUMA:そうですよね。ちょっと落ち着いたけど、去年、一昨年とカセット・ブームが来たり、新しいアーティストによる電子音楽やドローン、ニューエイジ的な作品がたくさんリリースされたり、過去の電子音楽もたくさん発掘・リイシューされたり、なんかもそういう流れにありますよね。熱い動きがあります。

— それ以外にもテクノを逸脱して、電子音楽的なものになっているアクトレスとか、元キャバレー・ヴォルテールのクリス・ワトソンが電車が走る音を録音したアルバム『El Tren Fantasma』、元スロッピング・グリッスルのメンバーがやってるカーター・トゥッティー・ヴォイドとか、ここ最近は若手もベテランも電子音楽や実験音楽に新しい解釈を加えた作品をリリースする流れにあるじゃないですか?

COMPUMA:そう、確かにエクスペリメンタル寄りの流れは今、一部で強く感じますよね。クリス・ワトソンは信頼できるフィールド・レコーディング・アーチストのベテランですが、あのアルバム『El Tren Fantasma』はビートこそないけど、自分的には、クラフトワークの『Trans Europe Express』的なソウルとかファンクを感じて感動したんです。しかも、あのアルバムのインフォメーションにはアンドリュー・ウェザオールが珍しくコメントを寄せていて、そこには同じように「ソウルを感じる」っていうようなことが書かれていて、「そうそう」って一人大きく頷いたり(笑)。ここ最近、自分がやっていることは、そういう流れと直接的につながっているわけではないと思うんですけど、でも、面白いですよね。
だんだん、初老といいうか、おっさんになってきてるんですが、音楽を聴く時の、自分にとっての肝というのは、ある時期からずっとどこか変わらずにあるのですが、日々の新しい音や音楽との出会いは、その時代時代の中で、肝を通して自分好みを探す旅を続けているような事とも思うんです。巡り巡っているし、失敗も思い出として記憶に残りますし、そして、その年月が長くなればなるほど、なんというか、好きか嫌いかもはっきりしてくるように思うのですが、そんな好き嫌いも超えたところで、距離感を調節することで、侘び寂びというか、味わいも感じとれたり、より愛でたくなったり、新たな発見があったり、時に厳しくなったり、より優しくもなるし、そんな音の旅をこれからもマイペースで続けていきたいですね。

— 最後に今回作っていただいたミックスについて一言お願いいたします。

COMPUMA:今回のミックスは、『Something In The Air』、そして『Magnetic』の流れの中で、ここ最近のDJの感じもありつつ、ディープ・ハウス?ディープ・ブレス?そんなようなイメージで試みてみました。それから、ここ最近、なんといいますか、"聴き疲れしない"というのがどこかテーマにあって、流れている音楽はそれぞれ違えど、『Something In The Air』『Magnetic』、そしてコンピレーション『Soup Stock Tokyoの音楽』でもそんな事を探って提案してみました。そして、今回の新作ミックスでも同じく、なるべく聞き疲れしないようなミックスを目指してみた次第です。どうぞよろしくおねがいいたします。

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